2010年8月20日金曜日

本:電子書籍の衝撃 ~本はいかに崩壊し、いかに復活するか?~ 佐々木俊尚著

日本ではまだまだ一般化されていませんが、
アメリカでは着実にシェアを伸ばしている電子書籍。
米出版社協会(AAP)が19日発表した10年上半期の米国での書籍売上高(推計)によると、電子書籍が前年同期の約3倍の約1億7970万ドル(約150億円)と大幅に増加し、書籍全体におけるシェア(占有率)が8.3%に達した。
http://mainichi.jp/select/today/news/20100821k0000m020068000c.html

その電子書籍について、
「日本ではどのように広がっていくだろうか?」
「日本の出版業界はどうなるか?どうすればいいのか?」
について、著者の考えが述べられている本です。





★日本の出版業界の自転車操業
本が売れていないのに、こんなに大量の新作が発行されるのはなぜ??と
疑問に思っている人は読んでみてください。
日本の出版業界の自転車操業システムについて
誰にでもわかるように説明されています。
私は、こういう話を読むと、
「この本を出版している出版社がすごいなあ」と思います。
つまり、“本を生業にする出版業界のあり方”を真っ向から批判する内容を
“本”として出しているわけです。

※出版業界の自転車操業についてはご存じの方も多いかと思います。
私も他の本で読んで知っていました。(そういえば同じ著者だったかも)

★電子書籍の普及を後押しするKindleとiPadの存在

・iPad
この本が執筆された時点でiPadはまだ発売されていなかったので、
iPadに対するイメージで書かれています。

Apple iPad Tablet (64GB, Wifi)
この本ではiPadはKindleの対抗馬として紹介されています。
それはそれであながち間違っていないのですが、
私は「iPad=電子書籍を読むためのガジェット」とは言い切れないと思っています。

つまり、
電子書籍を読むためにiPadを買う人はもちろんいると思いますが
電子書籍を読まない人でもiPadを買う可能性はいくらでもあるということです。
(「そもそもiPadって何?」という質問に答えるのは難しい…)




・Kindle
夫はKindleを持っていますが、私は使ったことがなかったので
この本の記述を読んで、非常にKindleに対してプラスの興味を持ちました。

Kindle Wireless Reading Device, Free 3G + Wi-Fi, 6" Display, Graphite, 3G Works Globally - Latest Generation
例えば
「紙の質感に出来るだけ近づけた画面を使っていること」
「バッテリーの持ちが非常に良いこと(1週間くらい)」
「白黒画面で、目に優しいこと」
「300g強と軽く、寝転がるなど好きな体勢で読めること」
(※小さいオリジナルのKindleの場合)
など、読書家のことを徹底的に考えている仕様に
Amazonの本への愛を感じます。
(ただビジネス上手なだけかもしれませんが、
私は素敵だと思ったのは事実です。)

▼日本語に対応したKindleが発売されます。
注文はAmazon.com経由で、8/27より世界各国に出荷されます。















★世界の距離がぐんと縮まる。
私がこの本を読みながら、漠然と考えていたのは、
電子書籍が広がることで、世界の“知識の距離”がぐんと縮まるのではないか、
ということです。

本書では、「もはや音楽に歴史というものはないと思う」という
ブライアン・イーノの発言を引用し、
iTunesが広まったことで古い音楽も新しい音楽も
すべて「現在」に属するようになったことを紹介しています。
(くだけて説明すると、
古い音楽を知らない若者がiTunes経由で「この曲かっこいいじゃん」と思って
購入した場合、その曲はその若者にとっては古い曲でもなんでもなく、
現在のものとして受け入れられている、ということです。)

これは過去と現在という時間の差を縮めた例だと思いますが、
私は、コンテンツの電子化は、距離も縮めると思います。

つまり、本が物質的な紙製の出版物の場合、
本を売っているのは特定の場所なので、
本を購入するのにはそこにいかなければなりません。
(例えば、東京でしか売っていない本は、札幌では買えないということです)

これは特に海外に住んでいる場合は顕著で、日本語の本を買う場合、
私たちは日本に一時帰国する際に大量に買い込んで、ヒーヒー言いながら
重い荷物として持ち帰るか、
帰国予定が無い場合は、めちゃくちゃ高い送料を払って通販する、
など、和書を購入するためには非常に高いハードルがあります。
(シアトルの場合は紀伊国屋で定価の1.5~3倍で買うとか…)
逆に、日本で洋書を買うと、おそろしく高いですよね。。。

ですが、電子書籍が普及すれば、
世界のどこにいても、日本語の本を購入できるかもしれないのです。
(実際はいろいろ規制があるので、すぐには自由化されないと思いますが)

つまり、日本語で書かれた知識を日本以外で入手する場合のコストが低くなり、
英語やその他の言語で書かれた知識を
日本で入手する場合のコストが低くなるということで、
長い目で見ると、本に書かれた知識に国境がなくなるのではないか、
ということです。

こんなにありがたいことは無い、と思うのは私だけではないはず。
電子書籍が早く日本の出版業界に普及してくれるよう、願っています。

※ちなみに電子書籍の普及に援護はしつつも、紙の本がやっぱり好きです。
みんなそうだと思います。

★本の構成のマイナス点
・音楽について約3分の1~半分のページを割いているのがちょっと…。
音楽の例から学ぶことはもちろん多いけれど
さすがに多すぎかもしれません。
電子書籍だけでは一冊分書けなかったのかも…。





本が好きな人は、ささっと読んでみられることをオススメします。
音楽業界がiPodの波に押されてapple store上で音楽を売り始めたように、
日本でも電子書籍が一般化される時代が、遠くない将来やってくるでしょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿